6,135万円。国土交通省の令和7年度住宅市場動向調査で、注文住宅を建て替えた世帯が用意した資金の平均です。
ただし中央値は4,000万円まで下がります。一部の高額な建て替えが平均を押し上げているためで、手元の計画と比べるなら中央値のほうが実感に近いはずです。そしてこの金額には、古い家を壊す費用、工事中の仮住まい、登記や税金まで、新築とは別の出費が混ざっています。
土地はすでにある。それでも建て替えが安く済むとは限らない理由を、資金の内訳と手続きの順番から見ていきます。
出典: 国土交通省『令和7年度住宅市場動向調査』報告書 2.4.1・2.2.2・2.3.1(2026年)
建て替えの資金は平均6,135万円、半分は自己資金
住宅市場動向調査は、前年度に家を建てた・買った世帯にアンケートで資金の出どころを聞いている国の調査です。注文住宅は全国が対象で、令和7年度は建て替えた90世帯から回答を得ています。件数は多くありませんが、建て替えを分けて集計している公的な資料はほかにほとんどありません。
| 項目 | 建て替えた世帯 | 土地を買って新築した世帯 |
|---|---|---|
| 資金総額(平均) | 6,135万円 | 7,646万円 |
| 資金総額(中央値) | 4,000万円 | 5,100万円 |
| うち自己資金(平均) | 3,158万円 | 2,305万円 |
| うち借入金(平均) | 2,977万円 | 5,342万円 |
| 自己資金比率 | 51.5% | 30.1% |
出典: 国土交通省『令和7年度住宅市場動向調査』報告書 2.4.1・2.2.2・2.3.1(2026年)。土地を買って新築した世帯は土地購入資金を含む

目を引くのは、借入金の少なさです。土地を買う世帯が5,000万円を超えて借りているのに対し、建て替えた世帯は3,000万円弱。自己資金が半分を占めています。
理由の一つは年齢でしょう。同じ調査で、建て替えた世帯の世帯主は平均63.5歳、60歳以上が66.7%を占めました。退職金や預貯金で建てる人が多く、長い住宅ローンを組みにくい年代でもあります。
出典: 国土交通省『令和7年度住宅市場動向調査』報告書 2.4.1・2.2.2・2.3.1(2026年)
もう一つ、建て替え後の家は小さくなる傾向があります。延べ床面積は建て替え前の平均146.1㎡から、建て替え後は130.7㎡へ。子どもが独立したあとの夫婦二人の暮らしに合わせて、部屋数を減らしている様子がうかがえます。
出典: 国土交通省『令和7年度住宅市場動向調査』報告書 2.4.1・2.2.2・2.3.1(2026年)
私たちは、建て替えの予算を立てるときに「土地代がかからないから新築より安い」という考え方をいったん脇に置くことをすすめています。土地代のかわりに、解体と仮住まいという建て替えだけの出費が乗ってくるからです。
建物・解体・仮住まい・諸費用、4つに分けて見積もる
建て替えの費用は、大きく4つの塊に分かれます。それぞれ見積もりを出す相手が違うため、一つの見積書で総額が分かることはまずありません。
| 費用の塊 | 主な中身 | 金額を決める相手 | 見積もりの時期 |
|---|---|---|---|
| 建物の工事費 | 本体工事、屋外給排水、地盤調査・改良、外構 | ハウスメーカー・工務店 | プラン決定後 |
| 解体費用 | 建物の取り壊し、廃材の処分、ブロック塀・庭木・浄化槽の撤去、石綿の調査 | 解体業者(建築会社経由のことも) | 現地調査後 |
| 仮住まい・引越し | 工事期間中の家賃、引越し2回分、荷物の一時保管 | 賃貸・引越し会社 | 工期が見えた時点 |
| 諸費用・税金 | 設計・確認申請、登記、ローン手数料、火災保険、固定資産税の増減 | 司法書士・金融機関・市町村 | 契約前後 |
建物の工事費以外の費目は、注文住宅の諸費用の内訳で一つずつ扱っています。外構の金額感は新築の外構費用の相場が参考になります。
土地ありで坪数別に建物の工事費を試算する
建物の工事費は面積でほぼ決まります。住宅金融支援機構のフラット35利用者調査(2025年度)では、注文住宅の1㎡当たり建設費の平均が35.9万円でした。この単価をそのまま掛けると、坪数ごとの目安は下の表のようになります。
| 延べ床面積 | ㎡換算 | 建物の工事費の目安(1㎡35.9万円) |
|---|---|---|
| 15坪 | 49.6㎡ | 約1,780万円 |
| 20坪 | 66.1㎡ | 約2,370万円 |
| 25坪 | 82.6㎡ | 約2,970万円 |
| 30坪 | 99.2㎡ | 約3,560万円 |
| 35坪 | 115.7㎡ | 約4,150万円 |
| 40坪 | 132.2㎡ | 約4,750万円 |
出典: 住宅金融支援機構『2025年度フラット35利用者調査』注文住宅 第15表(2026年)をもとに当サイトが計算(面積×全国平均単価)。地域・形・仕様の差は含まない
15坪や20坪の小さな家は、面積が半分でも金額が半分にはなりません。キッチンや浴室、玄関といった設備の費用は面積に比例しないため、小さい家ほど1㎡当たりの単価は上がりやすいのです。表の上の2行は、実際にはもう少し高く出ると見ておくのが無難でしょう。
坪単価の考え方は注文住宅の坪単価、平屋にするか二階建てにするかで変わる金額は平屋と二階建ての費用比較で詳しく試算しています。
解体費用の相場が「見積もりを取るまで分からない」理由
解体費用には、国や業界団体がまとめた全国の相場統計が見当たりません。住宅の解体は工事ごとの条件差が大きく、建物の大きさが同じでも金額が倍近く違うことがあるからです。ネット上でよく見る坪単価の目安も、各社が自社の施工例から出した数字です。
代わりに公的な手がかりになるのが、自治体の解体補助が補助額の計算に使う1㎡当たりの単価です。
| 自治体 | 計算に使う単価 | 補助率 | 上限額 |
|---|---|---|---|
| 北九州市 | 1㎡34,100円 | 23.0% | 30万円(所有者70歳以上は50万円、令和8〜10年度) |
| 四條畷市 | 1㎡39,900円 | 23% | 60万円(令和8年度に50万円から引き上げ) |
出典: 北九州市『木造住宅(住替え・建替えを前提とした除却工事)』(2026年4月更新)、四條畷市『木造住宅除却工事における補助制度』(2026年9月更新)
どちらも「実際の解体費」と「延べ床面積×単価」の安いほうに補助率を掛ける仕組みです。単価はあくまで補助の上限を計算するための物差しで、見積もりがこの金額になるという意味ではありません。
それでも、見積額がこの単価を大きく超えていたら理由を聞くきっかけになります。延べ床30坪(約99.2㎡)なら、34,100円で約338万円、39,900円で約396万円。これを上回る見積もりには、石綿の除去や重機の入れない立地といった、はっきりした理由があるはずです。
出典: 北九州市『木造住宅(住替え・建替えを前提とした除却工事)』(2026年4月更新)の単価をもとに当サイトが計算
同じ30坪でも金額が変わる5つの条件
- 建物の構造: 木造より鉄骨造、鉄骨造より鉄筋コンクリート造のほうが壊す手間と廃材が増える
- 前面道路と隣家との距離: 重機やトラックが入れないと手作業が増え、工期も延びる
- 石綿(アスベスト)の有無: 含む建材があれば除去の工程が別に加わる
- 地中に埋まっている物: 古い基礎、浄化槽、井戸、瓦の破片は、掘ってみるまで分からない
- 家の中に残した物: 家具や家電は建物の廃材と別に処分費がかかる
施主の側で動かせるのは、最後の家の中の物です。建て替えでは引越しの荷物と処分する物を分ける作業がどうしても発生します。粗大ごみの収集や家電リサイクルなど、市町村の回収を使って解体前に減らしておけば、解体業者にまとめて頼むより処分費を抑えられることがあります。長く住んだ家ほど物は多いので、引越しの2〜3か月前から手を付けておくと楽です。
庭木や物置、ブロック塀、カーポートも見積もりを左右します。新しい家でも使う物置や庭石があるなら、残す物と撤去する物を最初の現地調査のときに業者へ伝えておきます。あとから「これも残したい」と言うと、重機の動かし方が変わって追加費用になりかねません。
このうち地中の埋設物は、契約時点では見積もりに入れようがありません。追加費用が出たときの扱い(1㎡いくらで精算するのか、事前に連絡があるのか)を契約書に書いてもらうと、後のもめごとを減らせます。
解体業者を選ぶときに確かめる3つの書類
解体工事を請け負うには、建設業の許可か、都道府県知事への解体工事業の登録が必要です。登録や許可のない業者に頼むと、廃材の不法投棄などのトラブルに巻き込まれたとき、施主が責任を問われるおそれもあります。
出典: 環境省『建設リサイクル法の概要』、熊本県『石綿事前調査結果の報告について』
- 建設業許可証か解体工事業の登録通知書の写し
- 産業廃棄物の処分先が分かる書類(マニフェストの写しを工事後にもらえるか)
- 損害賠償保険の加入証明(隣家を傷つけたときの備え)
見積書は「解体工事一式」で済ませず、建物本体、付帯物の撤去、廃材の処分、石綿の調査、整地と、項目ごとに分けてもらいます。項目が分かれていれば、2社目の見積もりとも並べて比べられます。
解体の見積もりは、建築会社経由と解体業者への直接依頼の両方を取ると比べやすくなります。直接頼むと中間の手数料はかからない一方、地中埋設物が出たときの工程の調整や、新築工事との日程合わせは自分で担うことになります。
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解体にも使える補助金は、国と市町村で別々に探す
建て替えで使える補助は、新築の補助に上乗せされる国の加算と、古い家を壊すこと自体を支える市町村の補助の二本立てです。
みらいエコ住宅2026事業の古家除却加算
国土交通省のみらいエコ住宅2026事業では、長期優良住宅かZEH水準住宅を新築する場合、古い家を除却すると20万円が加算されます。GX志向型住宅には加算がありません。解体する家は新築と同じ場所でなくてもよく、建築主か親族が所有する住宅の解体を発注していること、2025年11月28日から完了報告までに解体が終わっていることが条件です。
出典: 国土交通省『みらいエコ住宅2026事業 注文住宅の新築』(2026年10月25日参照)
締切には注意が要ります。注文住宅のZEH水準住宅は交付申請が2026年9月30日で締め切られました。長期優良住宅などそれ以外の区分は2026年11月16日まで予約、12月31日まで交付申請を受け付けていますが、予算に達した時点で終わります。これから契約する人は、来年度の制度が出るかどうかを含めて住宅会社に確かめてください。制度の全体はみらいエコ住宅2026事業にまとめています。
出典: 国土交通省『みらいエコ住宅2026事業 注文住宅の新築』(2026年10月25日参照)
市町村の解体補助は「耐震性の低い古い木造」が中心
北九州市と四條畷市の制度は、どちらも1981年(昭和56年)5月31日以前に建てられた木造住宅で、耐震診断の評点が1.0未満であることを条件にしています。いわゆる旧耐震の家を、建て替えや住み替えを前提に壊す場合の補助です。
出典: 北九州市『木造住宅(住替え・建替えを前提とした除却工事)』(2026年4月更新)、四條畷市『木造住宅除却工事における補助制度』(2026年9月更新)
申請は着工前が原則で、先着順の制度も目立ちます。四條畷市では2026年5月に予算に達していったん受付を止め、その後に再開していました。年度の早い時期に相談するほど使える見込みは高くなります。
出典: 四條畷市『木造住宅除却工事における補助制度』(2026年9月更新)
たとえば北九州市で、延べ床30坪の家の解体費が200万円だったと想定します。200万円と約338万円の安いほうに23%を掛けると46万円。上限30万円にかかるため補助は30万円、所有者が70歳以上なら46万円です。耐震性の高い家に建て替えるなら、耐震等級3にかかる費用も合わせて検討しておくと判断しやすくなります。
出典: 北九州市『木造住宅(住替え・建替えを前提とした除却工事)』(2026年4月更新)をもとに当サイトが計算(想定例)
壊す日を1月1日の前にするか後にするか
建て替えでいちばん見落とされやすいのが、固定資産税の基準日です。固定資産税は毎年1月1日の状態で課税されます。そして住宅が建っている土地には特例があり、200㎡以下の部分は課税標準が6分の1、200㎡を超える部分は3分の1に下がっています。
出典: 総務省『固定資産税の概要』
年内に古い家を壊し、1月1日の時点で新しい家がまだ建っていないと、その年の土地は住宅用地として扱われない可能性があります。特例が外れれば、小規模住宅用地の課税標準は最大6倍。建て替え中の土地を一定の条件で住宅用地として扱う運用をしている市町村もあるため、解体の日程を決める前に市町村の資産税担当に確かめておくと安心です。
出典: 総務省『固定資産税の概要』
逆に、年明けすぐに解体して年内に完成させられれば、翌年1月1日には新しい住宅が建っていることになり、特例はそのまま続きます。新築の家屋には、一定の要件を満たすと固定資産税が一定期間減額される制度もあるので、完成時期と合わせて市町村に確認しておきます。
編集部の考えでは、工期に余裕があるなら解体を年明けにずらす価値は十分にあります。数週間の違いで1年分の税額が変わる話なので、工務店と日程を詰めるときに一度は話題に出してください。
滅失登記とは、建物がなくなったことを届ける登記
建物を取り壊したら、所有者は1か月以内に建物の滅失登記を申請しなければなりません。登記簿に古い家が残ったままだと、新しい家の登記や住宅ローンの手続きが進まないことがあります。土地家屋調査士に頼むか、法務局で自分で申請します。
出典: e-Gov法令検索『不動産登記法』第57条
解体の前に業者が出す2つの届け出
床面積80㎡以上の建物を解体する工事は建設リサイクル法の対象で、着手の7日前までに分別解体の計画を都道府県知事に届け出ます。届け出の義務を負うのは発注者、つまり施主です。委任状を渡して解体業者に代わりに出してもらうのが一般的です。
同じく80㎡以上の解体では、石綿(アスベスト)の事前調査の結果を、元請業者が都道府県などへ報告することになっています。見積もりに調査費が入っているか確かめておきましょう。
出典: 環境省『建設リサイクル法の概要』、熊本県『石綿事前調査結果の報告について』

仮住まいの費用は「月数」で決まる
仮住まいの費用は、家賃×月数に、引越し2回分と荷物の保管料を足した金額です。家賃は地域で決まるので動かしにくい一方、月数は段取りで縮められます。
縮める余地があるのは、解体を始めるまでの待ち時間です。建築確認の申請と解体業者の手配を並行して進め、引越しから解体着手までを短くする。完成から引き渡しまでの日程も先に押さえておく。建築会社によっては、建て替え中の仮住まい探しを手伝ってくれるところもあります。
30坪・夫婦二人の建て替えで想定してみる
数字を一度並べてみます。延べ床30坪の家を建て替え、夫婦二人で工事中は賃貸に住むという想定です。建物の工事費は全国平均の単価で約3,560万円。解体費は、先の北九州市の例と同じく200万円と置きます。仮住まいは家賃を月10万円、期間を8か月と仮に決めると80万円。これに引越し2回分と、登記・ローン・保険の諸費用が加わります。
| 費目 | 想定の金額 | 金額の根拠 |
|---|---|---|
| 建物の工事費(30坪) | 約3,560万円 | フラット35利用者調査の1㎡当たり平均35.9万円×99.2㎡ |
| 解体費 | 200万円 | 想定(実際は見積もりで決まる) |
| 解体の補助 | −30万円 | 北九州市の制度で計算した場合(所有者70歳未満) |
| 仮住まいの家賃 | 80万円 | 想定(月10万円×8か月) |
| 引越し・諸費用 | 別途 | 見積もりで確認 |
出典: 住宅金融支援機構『2025年度フラット35利用者調査』注文住宅 第15表(2026年)、北九州市『木造住宅(住替え・建替えを前提とした除却工事)』(2026年4月更新)をもとに当サイトが計算。解体費と家賃は想定の値
建物以外だけで250万円前後が積み上がる計算です。建て替えた世帯の資金の中央値4,000万円と比べると、建物に3,560万円を使った時点で余裕はあまり残りません。面積を27坪に絞れば建物は約360万円下がり、解体と仮住まいの分をほぼ吸収できます。
想定の値を変えれば結果も動きます。家賃の高い都市部や、工期が延びた場合はこの表より膨らみます。
ライフラインと近所への連絡も工程に入れる
解体の前には、電気・ガス・電話やインターネットの引き込み線を止めて撤去してもらう手続きが要ります。ガスの配管や電気の引き込み線が残ったままでは、解体を始められません。水道は解体中の散水に使うため、止めずに残しておくのが一般的です。どの線をいつ止めるかは解体業者と打ち合わせて決めます。
騒音とほこりが出る工事なので、近所へのあいさつも欠かせません。業者が回ってくれることが多いものの、建て替え後もそこに住み続けるのは施主です。着工の1〜2週間前に、施主も一緒に顔を出しておくと、その後の新築工事も含めて話が通りやすくなります。
住宅ローンを使う場合、新しい家が完成するまで本融資が実行されないことがあり、解体費や着工金の支払いが先に来ます。その間をつなぐ方法はつなぎ融資の仕組みで説明しています。親から資金援助を受けるなら、住宅資金の贈与税の扱いも先に確かめてください。
リフォームと比較して、建て替えを選ぶデメリットは何か
建て替えが向いていないケースもあります。同じ住宅市場動向調査では、三大都市圏でリフォームした世帯の資金は平均170万円、中央値70万円でした。部分的な改修と単純に比べるのは乱暴ですが、金額の桁が違うことは確かです。
出典: 国土交通省『令和7年度住宅市場動向調査』報告書 2.4.1・2.2.2・2.3.1(2026年)
| 比べる点 | 建て替え | リフォーム |
|---|---|---|
| 費用の規模 | 資金総額の中央値4,000万円 | 資金の中央値70万円(三大都市圏) |
| 耐震・断熱 | 今の基準で一からつくれる | 壁や床を開ける範囲で決まる |
| 間取り | 自由に変えられる | 柱・壁の位置に縛られる |
| 住みながらの工事 | できない(仮住まいが要る) | 工事内容によってはできる |
| 法律の制限 | 今の建築基準法が適用される | 既存の建物を生かせる |
出典: 国土交通省『令和7年度住宅市場動向調査』報告書 2.4.1・2.2.2・2.3.1(2026年)。リフォームは三大都市圏の数値
最後の行は見落とされがちです。建て替えると今の法律に合わせることになり、前面道路が狭い土地では敷地の一部を道路として後退させる必要が出たり、そもそも再建築できなかったりします。いまより小さな家しか建てられない土地もある、ということです。建築会社に相談する前に、役所の建築指導課で土地の条件を確認しておくと、話が早く進みます。
建て替えの前に、土地の条件で確かめること
建築基準法では、建物の敷地は原則として幅4m以上の道路に2m以上接していなければなりません。古い住宅地では、この条件を満たさないまま家が建っている土地が残っています。今の家は建っていても、壊したあと同じように建てられるとは限らないのです。
出典: e-Gov法令検索『建築基準法』第42条・第43条
幅4m未満の道に面した土地では、道の中心から2mの位置まで敷地を下げて建てるよう求められることがあります。下げた部分には家も塀も建てられません。建ぺい率や容積率も今の基準で計算し直すため、建て替え後の延べ床面積が今より小さくなることもあります。
確かめる先は、市町村の建築指導課と道路の担当課です。道路の種類(建築基準法上の道路かどうか)、セットバックの要否、建ぺい率・容積率、用途地域。この4つを聞いておけば、建築会社との最初の打ち合わせで「その土地にどこまで建つか」を前提に話ができます。
ここは意見が分かれますが、私たちは旧耐震の木造で、構造に手を入れる大規模な改修が必要なら、建て替えを先に検討する価値があると考えています。逆に1981年6月以降の建物で、悩みが設備の古さや水回りに限られるなら、リフォームのほうが筋のよい選択になりやすいでしょう。
建て替えで予算が狂う、よくある失敗
費用の失敗は、たいてい「見積もりに入っていなかったもの」から生まれます。建て替えに特有のものを並べると、次の5つです。
- 解体費を建物の見積もりに含まれていると思い込み、後から別請求が来る
- 地中から古い基礎や浄化槽が出て、追加の撤去費がかかる
- 工期が延びて仮住まいの家賃が数か月分増える
- 年内に解体して、翌年の固定資産税が上がる
- 補助金の締切や申請の順番を逃し、使えるはずの制度が使えない
1つ目は、建築会社と解体業者が別々のときに起こりやすい失敗です。建物の見積書に「解体工事 別途」と小さく書かれているだけ、ということもあります。総額の資料をもらうとき、解体・仮住まい・諸費用の欄が埋まっているかを見てください。空欄があれば、そこはまだ誰も金額を出していない費目です。
2つ目と3つ目はつながっています。地中から古い基礎が見つかれば撤去に日数がかかり、そのぶん新築の着工も遅れます。解体の契約に「追加工事が出たら着手前に金額を知らせる」と一文入れてもらい、仮住まいの契約は1〜2か月の延長ができる物件を選ぶ。この2つで、遅れが出ても慌てずに済みます。
4つ目と5つ目は日付の問題です。固定資産税の1月1日、補助金の予約と申請の締切、解体補助の事前申請。カレンダーに先に書き込んでから工程を組むと、取りこぼしは減ります。
どれも契約前の確認で避けられるものです。見積書の読み方は注文住宅の見積もりの見方、建築会社の選び方の違いは工務店とハウスメーカーの違いで取り上げています。
ここが気になる
- Q解体・撤去費用は修繕費として経費にできますか?
- A
自分が住む家の建て替えなら、個人の所得税で経費にはなりません。法人や事業用の建物では扱いが分かれ、国税庁の法人税基本通達7-3-6では、土地と一緒に買った建物をおおむね1年以内に取り壊すなど、当初から土地を使う目的が明らかな場合の取壊し費用は土地の取得価額に含めるとされています。それ以外の会計処理は税理士に確認してください。
- Q建て替えでも住宅ローン控除は使えますか?
- A
新築として要件を満たせば対象になります。床面積や省エネ性能、入居時期などの条件があるので、住宅ローン控除の2026年の条件で確認してください。
- Q解体工事の期間はどのくらいですか?
- A
建物の構造や大きさ、立地で変わります。届け出は着手の7日前までに必要なので、業者を決めてから着手まで少なくとも1週間は空く計算です。工程表を見積もりと一緒にもらえば、仮住まいの月数も読みやすくなります。
- Q親の名義の家を壊して子が建て替えても、補助の加算は受けられますか?
- A
みらいエコ住宅2026事業の除却加算は、新築の建築主か親族が所有する住宅の解体であれば対象です。ただし長期優良住宅かZEH水準住宅であることなど、ほかの要件と申請期限を満たす必要があります。
- Q建て替えの費用を抑えるなら、どこから削りますか?
- A
延べ床面積を絞るのがいちばん効きます。建て替えた世帯の家は平均で146.1㎡から130.7㎡へ小さくなっていました。今の家族の人数に合わせた広さで考えるのが近道です。
判断の目安
建て替えの総額は、建物の工事費に、解体・仮住まい・税金の3つを足して初めて見えてきます。最初の打ち合わせで建物の金額だけを聞いて判断しないこと。解体の見積もりを取り、市町村の補助を調べ、1月1日をまたぐかどうかで日程を組む。この順番を守れば、中央値4,000万円という数字を自分の家の数字に置き換えられます。
予算の上限から逆算したい人は年収から見た注文住宅の予算も参考にしてください。
どの会社に頼むか迷ったら、中立の窓口に無料相談する
注文住宅は同じ要望でも会社によって数百万円の差が出ます。展示場を1社ずつ回る前に、特定の会社を勧めない中立のアドバイザーに「予算・エリア・希望」を伝えて、合う会社を絞ってもらうと遠回りしません。LIFULL HOME’S 住まいの窓口は相談料無料、営業なし、店舗でもオンラインでも相談できます。
まずは自分で資料を集めたい方は 持ち家計画(複数社にまとめて資料請求・PR) も使えます。
参考・出典
- 国土交通省「令和7年度住宅市場動向調査」(2026年7月17日公表)、報告書 2.2.2・2.3.1・2.4.1
- 住宅金融支援機構「2025年度フラット35利用者調査」注文住宅 第15表
- 北九州市「木造住宅(住替え・建替えを前提とした除却工事)」(2026年4月20日更新)
- 四條畷市「木造住宅除却工事における補助制度」(2026年9月25日更新)
- 国土交通省「みらいエコ住宅2026事業 注文住宅の新築」
- 総務省「固定資産税の概要」
- 環境省「建設リサイクル法の概要」、熊本県「石綿事前調査結果の報告について」
- e-Gov法令検索「不動産登記法」第57条、国税庁「法人税基本通達」7-3-6
参照日: 2026年10月25日
