突撃レポート!建築・建材展2025:光触媒と建築DXが示す業界の未来

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AKITEKT編集長 伊藤 建

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2025年3月4日〜7日に東京ビッグサイトで開催された「建築・建材展2025」にはご参加されましたか?
今年も建築業界の最新トレンドが集結し、多くの工務店経営者や建築設計者の皆さんが足を運んでいたようですね。

私も現地でじっくりと見てきましたが、特に目立ったのは「光触媒関連の建材」と「建築DX系のサービス」でした!
抗菌・抗ウイルス性能を備えた建材や、建設現場の生産性を一気に向上させる最新のデジタルツールが数多く出展され、これからの建築業界を変えていく可能性を感じました。

本記事では、展示会で見つけた注目のトレンドや技術、現場で役立ちそうなサービスを詳しくご紹介します。

展示会の概要と来場者数

2025年3月4日〜7日に東京ビッグサイトで開催された「建築・建材展2025」は、住宅・ビル向け建材から施工技術、最新ソフトウェアまで幅広く網羅する総合展示会です。同期間に「JAPAN SHOP」「ライティング・フェア」なども同時開催され、4日間の来場者は合計65,224人1にのぼりました​。

JAPAN SHOP 2025 / 建築・建材展 2025 / ライティング・フェア 2025 合計

日付天気来場者数累計
3月4日(火)曇りのち雨13,397人13,397人
3月5日(水)15,656人29,053人
3月6日(木)曇り17,856人46,909人
3月7日(金)晴れ18,315人65,224人
合計65,224人

会場は多数の専門ゾーンに分かれ、デジタル技術を活用した建築DXや抗菌・抗ウイルスといった機能性建材が特に注目を集めていました。建築業界のプロたちが熱心にブースを巡り、新製品やサービスに質問する姿が印象的でした。

光触媒がもたらす「きれいな空間」

出典:(C) 光触媒工業会

光触媒を活用した建材やコーティング製品の出展が目立ちました。会場には光触媒工業会の大型ブースも登場し、工業会が推進する「きれいJAPAN」キャンペーンのもと、光触媒技術の原理や効果を紹介する展示やセミナーを実施。​​

例えばブース内では、光触媒がもたらす「環境浄化」「美観維持」「清潔な空間」といった効果を具体的な製品事例とともに紹介し、確かな性能を持つ製品に付与されるPIAJ認証マークについても解説していました​

大手塗料メーカーの日本ペイントもこのブースに参加し、同社の抗ウイルス・抗菌塗料「PROTECTON インテリアウォール VK-500」を展示しています​。

室内のウイルスや菌、臭いを抑制できる高機能塗料で、光触媒工業会の認証を取得した注目製品です。

光触媒関連以外にも、抗菌・抗ウイルス性能を高めた建材が多数出展されていました。たとえばフジコーは、わずか4時間で細菌を1万分の1以下まで減少させることができるという高性能な抗菌・抗ウイルスシートを新開発し、従来品の床タイルと合わせて展示​していました。

また、特殊な抗菌剤「パシフィックビーム・モールド」を紹介するブースでは、カビや藻の発生を幅広い菌種に対して抑制でき、内装・外装から水まわりまで使える画期的な防カビ技術が紹介されていました​

こうした背景には、コロナ禍以降の衛生意識の高まりや、建物を美しく長持ちさせたいニーズがあるように感じられます。実際、抗菌・抗ウイルス建材ゾーンは多くの来場者でにぎわい、汚れに強くメンテナンス負担を減らせる光触媒コーティングやタイルなどに工務店経営者の方々も強い関心を寄せていました。

建築DXサービスが現場を変える

建築DX(デジタルトランスフォーメーション)を掲げるサービスの出展も非常に盛り上がっていました。​

図面作成や施工管理、業務効率化など、建築現場のあらゆる業務をデジタル化するソリューションが勢揃いしています。現場管理のクラウドサービスからAIを活用した最新ツールまで、その種類は実に多彩でした。

中でも注目を集めていたのが、施工管理クラウドなど現場の生産性向上につながるサービスです。例えば ANDPAD(アンドパッド) は、施工現場の進行状況から経営データまで一元管理できるクラウド型プロジェクト管理サービスを大きくアピールしていました。既に20万社以上が利用する業界シェアNo.1ツールということもあり、そのブースでは導入事例や最新機能について熱心に説明が行われていました​

実際、「現場の見える化」で生産性向上に貢献するとの触れ込みどおり、職人さんや現場監督さん同士のリアルタイム情報共有や写真管理・工程管理など、現場の働き方を効率化する機能が豊富に紹介されていました。

また、スタートアップ企業のチャレンジも光っていました。東京大学松尾研究室発のAIスタートアップ企業(社名「燈(あかり)」)のブースでは、建設業向けの最先端AI・DXソリューションを紹介​

AIによる図面解析や点群データ処理、BIMモデルの活用、デジタルツイン、そして最近話題の大規模言語モデル(LLM)やAIエージェントまで、最新技術を駆使したサービス群に来場者も興味津々です​

さらに、建設業に特化した受発注・請求・経費・見積・原価管理のクラウドサービスや、業務支援用のAIチャットボットも提案されており、「ここまで来たか!」と驚く声が聞こえるほどでした​

ベテラン世代には少し難しく感じるキーワードもありますが、若い世代の技術者は真剣に耳を傾け、将来の現場への実装をイメージしている様子でした。

施工現場のDXツールとしては他にも、KANNA(カンナ)というサービスが注目されました。提供元のアルダグラム社によれば、KANNAは世界中で5万社以上が利用する「現場DXサービス」とのことで、プロジェクト管理アプリ「KANNAプロジェクト」とデジタル帳票アプリ「KANNAレポート」の2つのアプリから構成されています​

ブースでは実機デモを交え、スマホで現場写真や報告書を共有する様子や、ペーパーレス化できる電子帳票の操作画面などを体験できました。紙のチェックシートをそのまま電子化して入力・保存できる機能には、多くの施工管理担当者が関心を示していました。「写真でサクサク」というユニークな名前のクラウドサービスを展示する企業もあり、スマホ写真を現場報告や点検記録に活用して書類作業を大幅に削減できると紹介していました​。

業務管理系では他にも、ダイテック社のブースも賑わっていました。同社は住宅建設業向けクラウドを幅広く手掛けており、利用社数58,000社超の施工管理アプリ「現場Plus」や住宅会社向け基幹システム「注文分譲クラウドDX」、さらに電子受発注システム「受発注Plus」といった新旧サービスを一挙に展示​されていました。

業界でありがちな「現場の手戻り」や「書類の山」といった悩みをITで解決する提案には、工務店経営者の方々もうなずきながら耳を傾けていました​。

またSansanなど異業種のIT企業も営業DXを掲げて出展し、名刺管理による社内顧客情報の一元化で売上アップとコスト削減を両立するソリューションをPRしていました​。

建築業界でも営業・マーケティングのDXが進んでいることを実感します。

さらに、現場の働き方そのものを変えるユニークなサービスも登場しました。log build社は、360度カメラやVR技術を駆使したリモート施工管理サービス「Log System」を紹介​

ブースでは現場を遠隔確認できるVR体験ができ、移動時間ゼロで複数現場を管理する未来像に多くの施工管理者が興味を示しました。「これなら現場監督の負担が劇的に減る」といった声もあり、深刻な人手不足に対するソリューションとして期待されています​。実際、建築DXゾーン全体を通じてキーワードになっていたのは「人手不足の解消」と「働き方改革」です。どのサービスも職人や監督の負担軽減、コミュニケーション効率化、生産性アップを強調しており、デジタル技術で現場環境をより良くしようという熱意が感じられました。

展示会全体のトレンド分析と今後の方向性

今年の建築・建材展を通じて浮かび上がったトレンドは、大きく分けて「快適・安心な空間づくり」と「現場の生産性革命」の2つと言えそうです。前者の代表が光触媒をはじめとする機能性建材の広がりであり、後者の代表が建築DXサービスの定着です。展示会場にはこの両極とも言える分野のブースが軒を連ね、来場者の関心も二極に集中していました。実際、公式にも抗菌・抗ウイルス建材ゾーン建築DXゾーンといったテーマ別ゾーンが設けられ、分野ごとの出展社数も目立って多かったようです​。

​これは現在の建築業界が抱える課題をそのまま映し出しているように感じられます。一つはコロナ禍を経て求められる衛生・安全・持続可能性への対応、もう一つは慢性的な人手不足や効率化ニーズへの対応です。

光触媒に象徴される機能性建材のトレンドは、今後ますます強まるでしょう。抗ウイルス・抗菌といったキーワードはもちろん、空気浄化やセルフクリーニング機能など「建材自らが働く時代」が到来しつつあります。実際、光触媒工業会ブースで紹介されていたように、街の美観維持や環境浄化にまで貢献できる技術として光触媒は期待されています​。

今後は住宅のみならずオフィス・商業施設・公共施設でも、こうしたコーティングや材料の採用が増えるでしょう。建物の付加価値として「いつも綺麗でクリーン」「メンテナンスコスト削減」といったメリットを打ち出すケースが増えそうです。工務店経営者の方にとっても、これら新素材を上手に取り入れることで他社との差別化や顧客満足度向上につながるはずです。例えば、内装壁に抗ウイルス塗料を標準採用すれば、感染症対策に敏感なご家庭にも安心を提供できますし、外装に光触媒コーティングタイルを使えば長期にわたり美観を保てる住宅としてPRできるでしょう。

一方の建築DXの流れも、もはや「あると便利」ではなく「無くてはならない」段階に入りつつあります。今回出展されていた各種クラウドサービスやアプリは、いずれも現場の非効率を徹底的に洗い出してデジタル化で解決することを目指していました。施工スケジュール管理や写真台帳作成、職人さんとのチャット連絡、そして原価や発注の管理まで、紙と電話とFAXでやっていた作業がどんどんクラウド上に移行しています。特に若手の現場監督や設計担当者は、スマホやタブレットで業務が完結することに高い期待を寄せていました。「図面も書類も全部タブレットでOK」という現場が増えれば、働き方も大きく変わります。遠隔から上司がチェックしたり、経験の浅いスタッフでもAIがサポートしてくれたりと、技術と経験のギャップを埋める活用も進むでしょう。実際、AIチャットボットが施工の質問に答えてくれるサービス​や、VRで離れた現場を確認できるツール​など、数年前には考えられなかったようなソリューションが既に登場しています。今後の建築業界では、こうしたDXツールをいち早く導入した企業が生産性や競争力の面で優位に立つことが予想されます。

工務店・設計者への実践的なポイント

今回の展示会で感じたのは、「技術の目利き」がこれから一層大事になるということです。工務店経営者や建築設計者の皆様にとって、有望な新技術を取捨選択し、自社の強みに取り入れていくことが求められます。幸い、光触媒にせよDXツールにせよ、導入のハードルは以前より下がってきています。光触媒コーティングは施工業者に依頼すれば比較的手軽に施せますし、クラウドアプリもサブスクリプションで使えるサービスがほとんどです。まずは興味を持ったものから小さく試してみて、その効果を検証する姿勢が大切です。

例えば、今後有望と感じた技術としては**「遠隔施工管理」があります。これは単なるガジェット好きの話ではなく、深刻な現場監督不足を補い働き方改革にも直結するソリューションです。移動時間を減らし、1人の監督が複数現場を効率よく見る仕組みは、将来的に中小の工務店でも必要になるかもしれません。その意味で、ログビルド社のLog SystemのようなVR現場管理や、現場を撮影してクラウドで共有するカメラ連携型サービスは要注目です。また、日々の業務では写真管理や帳票作成にまだまだ無駄な時間が取られている現場も多いでしょう。そうした部分は、今回紹介したKANNAレポートのように現場スタッフでも直感的に使えるアプリで改善できる可能性があります。​

「うちの若手に使いこなせるかな…」という心配もあるかもしれませんが、展示会で実演を見る限り操作はシンプルでしたし、むしろスマホ世代には紙やエクセルより受け入れられやすいように思いました。

最後に、どの技術も目的ではなく手段だという点を忘れないことが重要です。光触媒もDXツールも、それ自体が流行りだから導入するのではなく、「自社の家づくりを良くするため」「お客様により価値を提供するため」に活かしてこそ意味があります。今回の建築・建材展で得た情報やヒントをぜひ社内で共有し、自社の課題にフィットするソリューションは何か、スタッフの意見も聞きながら検討してみてください。幸い展示会の公式サイトには出展者一覧やセミナー資料も掲載されていますので​、会場に行けなかった方も情報収集できます。建築業界は今、大きな技術革新の波の中にあります。この波を前向きに捉えて、「快適で安心な建物づくり」と「効率的で働きやすい現場づくり」の両立を目指していきましょう。今回のトレンドをヒントに、皆様のビジネスがさらに発展することを期待しています。

  1. 日経メッセ 街づくり・店づくり総合展 2025年 来場者数 ↩︎
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